トレーニングの強度やレースの目標ペース設定を考えるにあたって、AT値やLT値といった「閾値」の概念がしばしば参照される事がありますが、使う人によってその定義はまちまちだったりします。

定義が異なれば、目的も変わり、トレーニングの効果も変わってくるため、ここは改めてそれぞれが意味するところを整理していきたいと思います。

AT値

まずAT値。これは一般的にはAnaerobic Threshold(無酸素性閾値・嫌気性代謝閾値の略として使われることが多いのですが、別の概念としてAerobic Thresholdというものがあり(日本語訳をあまり見かけないのですが、有酸素性閾値といったとこでしょうか)、これもまた略すとATとなるため、ややこしさを生んでいます。ここではAerobic ThresholdをAeT値、Anaerobic ThresholdをAnT値として使い分けることとします。

LT値

次にLT値。これはLactate Threshold(乳酸性閾値)の略として使われていますが、AT値とほぼ同義で使われていることが多く、これにAT値と言った時のAeTAnTの概念が加わり、一層ややこしさを増しています。

科学的アプローチをするコーチによる定義

科学的根拠と実践に基づくトレーニング理論を展開するRunnersConnectと、運動科学の修士号を持ち、持久系スポーツ(主に自転車とトライアスロン)におけるプロのコーチであるJoe Friel氏のサイトにて、それぞれの用語が定義されていたので比較しつつ整理したいと思います(要約、*印は自分なりの解釈)。

RunnersConnect Joe Friel
AeT
  • 現在のMペース
  • 脂肪をエネルギー源として使える最速のペース

*有酸素運動の範囲の強度

  • 数時間の運動を続けられるレベルの強度
  • 大体最大心拍数の70%

*有酸素運動の範囲の強度

LT
  • 乳酸が蓄積し始めるポイント
  • AnTの85-91%の強度

*乳酸が蓄積し始めるが、一定量で安定している状態

  • 血中の乳酸量が4mmol/Lに達するポイント
  • 1時間程度継続可能な強度
  • 血中濃度によって計測
AnT
  • 乳酸の発生が、消費を上回るポイント(4mmol/L )
  • 1時間程度継続可能な強度

*このポイントにくると乳酸が一気に蓄積していく

  • グリコーゲンがエネルギー源として大半をしめるレベルの強度
  • 1時間程度継続可能な強度
  • 呼気によって計測

AeTに関しては、表現は違えど、両者とも同様の概念を表しているように思えます。LTとAnTについては違いがあり、RunnersConnectでは、LTとAnTを明確に分けている一方、Joe Friel氏はLTとAnTは科学者以外にとっては似たようなものであって、計測方法が主な違いとしています。

自分なりの解釈

個人的には、LTとAnTを実際のトレーニングにおいてそこまで細かく使い分けることがあまり現実的ではなさそうなので、ほぼ同様に考えて良いと思っています。私の場合は、各閾値を境にざっくりと3つのゾーンに分けて考えてるとスッキリします。

③ 高速・継続時間短(主要エネルギー源:グリコーゲン)

<AnT/LT> 10kmレースペースとハーフマラソンレースペースの中間

② 中速・継続時間中(主要エネルギー源:グリコーゲン+[脂肪])

<AeT> マラソンレースペース

① 低速・継続時間長(主要エネルギー源:脂肪)

まとめ:2種類の閾値走

これまで「閾値走」と言えば、LT走の事だと思い込んでいましたが、閾値について調べる中で、AeTという概念も大事だと考えるようになりました。今後のトレーニングにおいて「閾値走」を行うにあたっては、目的に応じて以下の2種類で使い分けていこうと思います。

AnT/LT走

 

目的:AnT/LTを上げ、乳酸が発生しはじめてからも走り続けられる距離・時間を長くし、ハーフマラソンまでのレースやマラソンの終盤で維持できるペースを上げる

AeT走

目的:AeTを上げ、有酸素運動の強度で走り続ける距離・時間を長くし、マラソンレースで維持できるペースを上げる

 

 

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