過去に事例から考える脚つり・痙攣の原因、事例から考える脚つり・痙攣の原因(2)といったエントリーでも書いた通り、フルマラソンのレース終盤において必ず脚が痙攣してしまうというのはマラソンを初めて以来長年の悩みでしたが、先日出場した勝田全国マラソンではついに脚が攣ることなく、一度も止まる事なく、最後まで走りきることが出来ました。このエントリーでは、今回なぜ脚が攣らなかったのか、これまでと何が違った、その要因を自分なりに分析してみたいと思います。
基本スタンス
マラソンにおける脚の痙攣対策 ~ 新商品登場のエントリーでも言及している通り、痙攣の原因には諸説あるものの、科学的に解明されているわけではないようです。痙攣対策としてレース中の各種サプリメント補給は念のために行っていますが、自分としては気休めのおまじないのようなものと考えています。
冒頭に記載した過去エントリーによる考察を踏まえると、「筋疲労による神経の異常反応説」が自分の中では最も有力な仮説となっています。よって、痙攣を防ぐためには以下の2点が重要であると考えました。
- 目標レースペースで走り続けられるだけの筋肉の持久力を高める
- レース中可能な限り筋疲労に繋がる負荷を軽減する
結論としては、今回のレース結果を踏まえ、自分の中ではこの仮説が更に有力なものとなっています。
今回行ったこと
上記仮説に基づき、今回は以下の事を行いました。
1.レースまでのトレーニング
昨年12月の湘南国際マラソンから勝田までは2ヶ月弱。この間の練習は以下のような事を意識したメニューにしました。(走行距離合計:380km程度)
①ロング走
30km走、2日合計で45kmなど、計3回実施(終盤のビルドアップなど、一部レースペース or それより速いペースを含む)。
⇒ 長時間運動による筋疲労への耐性強化
②ミドル走
これまでのポイント練習は10km以内で終わることが多かったのですが、1日に走る距離を伸ばし10km~15kmは走るようにした(ペース走、ビルドアップ、閾値走2本等)。
⇒ スピード持久力の強化
③ジョグ
つなぎの日に行っていたジョグが今まで6分台で30分未満だったものを、5:30程度で40分は行うようにした。
⇒ 有酸素性能力の向上
2.レース中
レース中には、筋疲労に繋がる負荷を軽減すべく以下の事を意識しました。
①心拍数のコントロール
さいたま国際、湘南国際のデータを見ると、だいたい30km過ぎぐらいから心拍数がほぼ170台に上がっていて、その状態が30分~40分続いたところで痙攣が発生しているというのが共通点でした。よって今回は残り5kmを切るまでは心拍数が170を越えた状態が続かないようにコントロールしました。
②フォーム
さいたま国際、湘南国際で意識していた点を以下の様に少し変えました(もちろん練習のときから意識しましたし、それをサポートする為の体幹筋トレも行いました)。
- 骨盤を立てる(前傾させる)
⇒加えて、腰の位置を高くキープし、膝の曲げ伸ばしによる上下動を少なくすることを意識しました。姿勢を前傾させる着地をフォアフット気味にする(着地点の上に重心を置き、接地時間を短くする)⇒これらを意識すると私の場合どうしてもふくらはぎへの負荷が大きくなってしまうので、着地時の衝撃を脚ではなく、丹田、骨盤に響かせる意識に変えました。
③ピッチ
さいたま国際、湘南国際のピッチ数を見ると両方とも平均175bpmでした。Jack Danielsコーチによると推奨は180bpm以上とのこと。これを踏まえるとやはり自分の場合は脚の接地時間が長く、脚の力を使いすぎていたとも考えられます。ということで、上記フォームと併せて、いつもよりピッチを上げてリズム良く走る事を意識しました。
レースの振り返り
①心拍数のコントロール
さいたま国際の心拍数推移と※心拍ゾーン分布
湘南国際の心拍数推移と※心拍ゾーン分布
勝田の心拍数推移と※心拍ゾーン分布
スケールが微妙に異なるので少し見づらいですが、今回はプラン通り35kmまでは心拍数を170以下で維持できました。以降終盤にかけてビルドアップしていった為、その後の心拍数は右肩上がりとなりましたが、結果として過去2レースとは異なり170以上の運動時間帯をより終盤に寄せ、かつ30分程度にとどめられたのが良かったと思います。
※心拍ゾーン分布
「ややきつい」:154-170bpm 「きつい」:171-176bpm 「非常にきつい」:177-186bpm
4:45/kmという過去2レースよりも早いペースで走っていても35kmまでの心拍数を抑えられたのは1-①、1-③、終盤のラストスパートが出来たのは1-①、1-②の効果ではないでしょうか。
加えて過去2レースと比べ気温が低かった事も、心拍数を低域で抑えることができた要因だと思われます。(やっぱり寒い時期のレースの方が好きですね)
②フォーム
フォームの効果を実感出来たのは30km以降です。過去のレースでオールスポーツ撮影の写真を見てもわかりますが、終盤で疲れがでてくるとどうしても腰が下がってきます。今回は疲れを感じたときこそ意識して腰高をキープし直すと、脚への負荷がふっと軽くなる感覚がありました。やはり腰が下がった状態でペースを維持しようとするとどうしても脚の力を使った走りとなり、筋疲労を促進するといった悪循環になるのではないかと思います。
35kmを過ぎたあたりで沿道から「フォームだけ意識して!」と声援を送っている方の声が聞こえてきましたが、的を射ているなと思いました。
③ピッチ
上記腰高のフォームが維持できていると、リズムよくタンタンとピッチ刻むことができ、脚に負荷をかけない、よくいう「置くだけ」といった感覚もなんとなく掴めたような気がします。実際のデータを見てみたところ、ばっちり平均180bpmで走れていました(グラフはケイデンス=腕振りの往復なので x 2がピッチ)。
まとめ
長年悩まされて来た痙攣。科学的にも解明されていないテーマの為、これといって明確な答えがあるわけではありません。今回の結果も、過去のレースと単純比較できない部分や個人差もあると思いますので、仮説をサポートする単なる一個人の結果にすぎないと考えています。
とはいえ、一旦結果が出せたので、引き続き上記アプローチをベースにトレーニングを重ね、今後のレースで記録を伸ばしていきたいと思います。
次のレースでも攣りませんように。