マラソントレーニングの一つに、30km走に代表される「ロング走/距離走」といったものがありますが、2月、3月の大会に向けて長い距離の走り込みをしている人も多いかと思います。個人的にロング走/距離走をする時にいつも迷うのが設定ペース。どれぐらいのペースで走るのが最も効果的のでしょうか?このエントリーではこの点についてまとめておきたいと思います。

ロング走/距離走の目的(効果)

まず、その目的から。一般的には「持久力をつける」「脚の持ちを良くする」と言われていることが多いかと思いますが、具体的にはどのような目的(効果)があるのでしょうか? RunnersConnectの記事「What is the Optimal Long Run Paceで、ロング走/距離走の運動生理学的な効果がまとめられていたので、以下、要訳します。

1.毛細血管の増加

毛細血管とは筋肉に酸素や栄養を運ぶ血管で、筋繊維の毛細血管が発達していればいるほど、素早く酸素や糖質を筋肉に届けることができる。毛細血管は5km走の60%~75%のスピードで最も発達すると言われている。

上記ペース以外では全く効果がないわけではないが、速く走ったからといって劇的に効果が上がったり、遅く走ったからといって劇的に効果が落ちるというものではない。

「エネルギー源の運搬経路を増やす」といったところでしょうか。

※研究のソースはありませんが、『ダニエルズのランニングフォーミュラ』でも、ロング走を行うEペースの効果として「毛細血管新生(活動筋に酸素を運搬する微細な血管が増えること)の促進」とあるのと、上記ペースがEペースと一致する部分がある為信用することとします。

2.遅筋繊維のミオグロビン増加

ミオグロビンとは筋肉内にあるタンパク質で、(毛細血管を通じて赤血球中のヘモグロビンが運んできた)酸素を筋肉の中に運ぶ役割を持つ。運動中に酸素が不足してくると、ミオグロビンは酸素をミトコンドリアに放出する。筋肉内のミオグロビンが多ければ多いほど、より多くの酸素を筋肉に届けることができる。ミオグロビンは全ての筋肉にあるものだが、ロング走/距離走では遅筋繊維(Type-I)での増加を目的としている。

遅筋線維(Type-I)への刺激はVO2Maxの63%~77%、5km走の55%~75%のスピードで最大となることが研究で明らかになっている。

「エネルギー源の取り込み口を増やす」といったところでしょうか。

※研究のソースはありませんが、『ダニエルズのランニングフォーミュラ』でも、ロング走を行うEペースの効果として「活動筋自体がランニングに適した特徴を備えていくこと」とあるのと(ミオグロビンが増えることがランニングに適した特徴を備えると解釈)、上記ペースがEペースと一致する部分がある為信用することとします。

3.グリコーゲン貯蔵量の増加

グリコーゲンとは糖質がエネルギーとして利用可能な形で筋肉内に貯蔵されたもので、90分以下のレースでは重要ではないが、マラソンにおいては筋肉内に貯蔵されるグリコーゲンが多ければ多いほど、長時間ガス欠を防ぐことができる。(Eペースでの)ロング走/距離走は、貯蔵されたグリコーゲンを使い果たすことを目的としている。体はこの刺激に対して、より多くのグリコーゲンを貯蔵できるようにする形で反応する。

速く走れば走るほど、糖質がエネルギー源として消費される。ロング走/距離走を走りきるのに十分なエネルギーを供給しつつ、大量の糖質を消費するのに最適なペースに関しては、科学的な研究があるわけではないが、経験則、及びエリートランナーを調査した限りでは、5km走の65%~75%のスピードが最適なペースと思われる。

「エネルギー源の貯蔵量を増やす」といったところでしょうか。

この点については『アドバンスト・マラソントレーニング』 においてもロング走の目的として記載されています。

なお、『青トレ青学駅伝チームのピーキング&ランニングケア』にも「高強度の練習、レースの後は素早く(30分以内のゴールデンタイム)糖質を補給することが、グリコーゲンの貯蔵量を増やす」とありましたが、どうやらロング走/距離走をするだけでなく、走った後の素早い糖質補給もポイントのようですね。

4.ミトコンドリアの増加

ミトコンドリアは筋細胞内にある微細な細胞小器官で、エネルギー(ATP:アデノシン三リン酸)を生産する働きをもつもので、酸素と使用して糖質、脂肪、タンパク質を分解してエネルギーに変換する。よって、ミトコンドリアが多く、密集していればいるほど、運動中に多くのエネルギーを生産でき、速く、長く走ることができる。

ミトコンドリアの発達に最適な距離とペースに関する研究が、Holloszy (1967) とDudley (1982)によってが発表されている。 HolloszyはVO2Maxの50%~75%のペースでの2時間のランニングが、ミトコンドリアの発達に最適であることを発見し、同様にDudleyはVO2Maxの70%~75%のペースでの90分のランニングが遅筋のミトコンドリア増強に最適であることを発見している。

「エネルギーの生産工場を増やす」といったところでしょうか。

ロング走/距離走に最適なペース

前述の記事では上記の運動生理学的効果を得るのにもっとも効率的なペースが、表としてまとめられていますが、マイル表示で分かりづらかったので、キロ表示に変換しつつ、参考となる5km走のタイムを複数パターン設ける形にアレンジして、以下にまとめました。(元記事の表にグリコーゲン貯蔵量の増加に関するペースが記載されていないのは科学的根拠がないからでしょうか?)

こう見るとペースの幅が非常に広いですね。最も遅いペースの方はいわゆるLSDと言われているものに相当するようにも見えます。個人的には「遅すぎるペースはフォームが崩れる可能性があるので、一定の走力がある人は7:00/km~8:00/kmで走るLSDはしない方が良い」と思っている派なので、同じ効果なのであればどちらかというと速い方のペースに寄りに合わせる方がしっくり来ます。

毛細血管の増加 ミオグロビンの増加 ミトコンドリアの増加
5kmペース比 60%-75% 55%-75% 65%-75%
5kmタイム ペース
22:30の場合 4:30/km 7:30-6:00 8:12-6:00 6:54-6:00
22:00の場合 4:24/km 7:18-5:54 8:00-5:54 6:48-5:54
21:00の場合 4:12/km 7:00-5:36 7:36-5:36 6:30-5:36
20:00の場合 4:00/km 6:42-5:18 7:18-5:18 6:12-5:18
19:00の場合 3:48/km 6:18-5:06 6:54-5:06 5:48-5:06
18:00の場合 3:36/km 6:00-4:48 6:30-4:48 5:30-4:48

なお、『アドバンスト・マラソントレーニング』では、ロング走のペースは「レースペースの+10%~+20%」とされていますが、フルマラソンのタイム毎にまとめると、以下の通りとなります。こうして見てみても、上記表における速い方のペースに寄りに合わせる方がしっくり来ます。ジャック・ダニエルズのVDOT CalculatorのEペースとも近いですね。

レースペース  +10%  +20%
サブ4 5:41/km 6:15/km 6:49/km
サブ3.5 4:58/km 5:27/km 5:57/km
サブ315 4:37/km 5:04/km 5:32/km
サブ310 4:30/km 4:57/km 5:24/km
サブ3 4:15/km 4:40/km 5:06/km

その他の目的

一方、レースに近い距離を、レースと同等のペースで走ることでシミュレーションをするという目的で行うロング走/距離走もあるかと思います。これはこれで意味があることだとは思いますが、非常に負荷が高く、回復に時間がかかる為、そんなに頻繁にできるものではないので、個人的には、レースの3週間前を目処に1度実施して本番レースの設定ペースを再確認するという位置づけで行うようにしています。

まとめ

  • ロング走/距離走の目的は「毛細血管の増加」「遅筋繊維のミオグロビン増加」「グリコーゲン貯蔵量の増加」「ミトコンドリアの増加」
  • 上記運動生理学的効果を得る為には、5km走のスピードの75%を越えない程度のペースが最適。

今後のロング走/距離走においては上記表のペースを参考にしていこうと思います。


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