これまでランニング時に使用するGPSウォッチはSUUNTO Ambit3 Verticalを愛用していましたが、気圧センサーが故障してしまったこと(そして保証も切れている)や、光学式心拍計に興味があったことから、SUUNTO SPARTAN TRAINER Wrist HRに乗り換えました(Ambit3 Verticalは主に普段使いに)。

利用し始めて2ヶ月程経過したので、その使用感をレビューしたいと思います。

良かった点

①心拍ベルトが不要

個人的にはトレーニングやレースの際に心拍数を計測してその強度を測ることが習慣となっています。これまではベルトを胸に装着して計測するタイプのものを使用していましたが、

  • 移動先まで持ち歩いたり、走るたびに装着するのが地味に面倒
  • 夏場は大量の汗が染み込んでしまうため、すぐに洗えないと匂いが気になる

といった点が課題でした。Spartan Trainer Wrist HRはLEDを使って手首で心拍数を計測する光学式心拍計測なので胸のベルトは不要となり、これらの課題はいずれも解決され、とても快適になりました。

光学式心拍計測技術の仕組み(SUUNTO Webサイトより

Suunto wrist HRは、 高精度・高性能なウェアラブル生体識別センサー技術で業界トップクラスの米国バレンセル社によって開発された光学式心拍計測技術を採用しています。

時計の裏面(肌に接触する部分)に内蔵されている光学式心拍センサーが、ユーザーの手首にLEDを用いて光を照射し、血流によって反射される散乱光の量を測定します。この技術は、脈拍あるいは血液量(心拍出量)の変動などによって血液流量が動的に変化すると、その変化に応じて体内に浸透する光が予測可能な方法で反射(散乱)されるという事実に基づいています。

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②軽い

Ambit3 Verticalの重量が 74 gなのに対し、Spartan Trainer Wrist HRの重量は56gAmbit3 Verticalを使用していた時は、その重さが当たり前だと思っていたので全く気にしていませんでしたが、Spartan Trainer Wrist HRに変えてからはその軽さにビックリしました。たった18g差がここまで大きいとは。軽い時計だとここまで腕振りが楽になるのかと思うと、もう元には戻りづらいものがあります。

③見やすい

Ambit3 VerticalとSpartan Trainer Wrist HRではディスプレイ表示に以下のような違いがあり、とても見やすくなっています。とくに日差しの強い日中や、夜間走行時の視認性は大幅に向上したと思います。

Ambit3 Vertical Spartan Trainer Wrist HR
ディスプレイ モノクロ カラー
表示解像度 128 x 128 218 x 218

④ボタンが押しやすい

Ambit3 Verticalはボタンが固く、かなり強く押さないと反応しないように思います。ラップの手動計測を行う際などは、押したつもりが押せていなかったということがあり、正確に計測できなかったことも度々ありました。Spartan Wrist HRにしてからは自然に押すだけで反応し、走りながらの操作もとてもしやすくなりました。

残念な点

①心拍数の計測が非常に不安定

光学式心拍計になってベルトを装着しなくて良くなったのはとても良かった点ですが、正直心拍数の計測が非常に不安定であるというのが、2ヶ月使用した結果の実感です。一定のペースで走るペース走を行った際の心拍数の推移を4回分例として以下に挙げます。

ペース走の場合、心拍数は一定レベルで推移しつつ緩やかに上っていくのが通常のパターンですが、これらの例では規則性もなく非常に不安定です。ペース走以外でも、ジョグにもかかわらずいきなり心拍数が180bpmを越えたりと、異常値が出ることが頻繁にあるので、ほとんど当てにならないというのが正直なところ。

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ジョグなのに平均181bpm/最大218bpmはありえない

SUUNTOWebサイトを見てみると、やはり光学式には現時点での技術では限界があり、ベルトを装着する方式の方が信頼性は高いようです。

光学式心拍計測の正確性および信頼性は?

光学式心拍計測技術は、ここ数年で飛躍的な進歩を遂げています。しかしながら、正確性および信頼性では、Suunto Smart Sensorなど、従来のチェストストラップ式心拍センサーによる心拍計測技術と同等のレベルにまでは及ばず、今後さらなる技術改良が必要であると言えます。現時点において、最も正確な光学式心拍計測技術を用いても、チェストストラップ式センサーによる測定データとの誤差は、90パーセントの確率で5パーセント以内に達するのが限界と言えます。

光学式心拍計測は、時計の動きに対して非常に敏感に反応するため、通常の時計よりも若干高めの位置に装着し、時計が不安定にならないようしっかりと固定する必要があります。測定値は、個々のユーザーの皮膚表面に近い血液循環の状態(血流量、血流速度、血液の構成など)によって異なります。

使い方にも色々注意点があるようです。

光学式心拍計測を使用する場合に注意すべき点は?

手首で心拍数を計測する方法は、ユーザーの腕から安定した心拍数を測定できるようなアクティビティに最も適しています。血流が安定しており、時計の裏面が常に肌に接触していることが条件となります。ランニング、サイクリング、毎日の日常的なアクティビティ(安静時の心拍計測を含む)などのアクティビティに向いています。

一方、腕を不規則に動かすようなアクティビティや、かなり高い運動強度を要するインターバルトレーニング、クロスフィット、ラケットスポーツなど、かなり激しい運動では、デバイスによって測定される心拍数データの精度が落ちてしまう可能性があります。これは、血流量(血液流量、血流速度)と手や腕の動きが速すぎ、しかも安定しないことから、光学式心拍センサーによる正確な心拍数の測定が困難になるためです。しかしながら、休憩中や安静時には、時計によって測定される心拍数データの精度が通常レベルに戻ります。

手首での光学式心計測で最適な結果を得るための注意点とは?

手首での光学式心拍計測は、簡単で便利な計測方法です。最適な結果を得るためには、心拍計測に影響する下記の事柄にご注意ください。

  • 時計は直接肌に装着してください。どんなに薄くてもこの時計のセンサーと肌との間に衣類がないようにしてください。
  • 普段よりも高めの位置に時計を装着してください。センサーは生体組織を通じて血流を読み取ります。より多くの生体組織からデータを読み取ることで、より正確な結果を得ることができます。
  • テニスラケットを握るときのように腕を動かしたり、筋肉を屈曲させると、このセンサーの読み取り精度が変わる可能性があります。
  • 心拍数が低いと、このセンサーは安定した読み取りを実現できないことがあります。計測を始める前に軽くウォームアップすることをお勧めします。
  • スイミングなどの水中でのスポーツアクティビティでは、光学センサーにより測定された心拍数には若干の誤差があり、実際の心拍数とは異なります。
  • 地肌の色が濃い場合や、タトゥー(刺青)があると光学センサーからの光が遮断され、正確な測定が難しくなることがあります。
  • 最高の精度と心拍数の変化に対して最速の応答速度を実現するには、例えば Suunto Smart Sensor 等、チェストストラップの心拍センサーをお使いください。自転車のハンドルバーに時計をマウントして使用する場合、あるいは袖の上から時計を装着する場合、心拍数を正確に測定するには心拍ベルトを使用するようにしてください。

注意点は守っているはずなのですがねえ、、、。「タトゥーで光が遮断され、正確な測定が難しくなる」とあったので、もしかしたら濃い腕毛が邪魔をしているのでは?と腕毛をツルツルに剃ってみましたが、それでも変わりませんでした。余談ですが、この製品に搭載されているセンサーを提供するValencell社のホワイトペーパーを見ると、自分よりも圧倒的に腕毛が濃い人でテストをしているようなので、腕毛は関係ないようです。

それにしても誤差というレベルで収まっていないので、少なくとも私の使い方としては実用に値しないというのが現時点での評価です。ベルトで計測する場合、特に冬場の乾燥した時期は走り始めの値が不安定になるものの、ベルトをしっかりと湿らせれば正しく計測できるので、これならまだベルトを装着した方が良いですね。

幸いベルト式の心拍計とペアリングをしている場合には、ベルトの方で計測されるようなので、レースのときなど正確に計測したい時はそちらを使おうと思います。

②GPSの精度がイマイチ

Spartan Trainer Wrist HRを使い始めてからは、いつもと同じコースを走っていても距離が長めに計測されるようになりました。この点については、Ambit3 Verticalで計測された距離が必ずしも正しかったとは限らないので、どちらを信用したら良いのか悩ましいものです。

そこで走った距離がわかる400mトラックで何回か検証したところ(第1コースの内側を走行)、やはり1kmあたり10~15m長く計測されていることがわかりました。5km走では大体5.06km~5.08km、10km走では10.1kmといった感じです。Movescountで走った軌跡を見てみると、細かく左右にぶれているようです。精度が高すぎて腕振りの影響がでていたりするのでしょうか?

無題

実際に走った距離の方が短いと、自分が想定していたペースよりも遅く走ったことになり、走ったつもりになっているということがあり得るので、これは困ったものです。ランの記録を同期後に「GPSの最適化を実行中」と画面に表示されるので、これを繰り返していると精度は上がっていくのでしょうか?今後のファームウェアアップデートでも改善される事を期待しています。

③計測開始時のタイムラグがある

もう1点困った点としては、エクササイズ開始時にスタートボタンを押してから3秒程遅れて計測が開始されるといったタイムラグがあることです。これだとタイムトライアルやレースの号砲に合わせてスタートしても、タイムにずれが出てしまうので困りものです。

“Trainer”という名の通り、トレーニング用であってレース用ではないと言ってしまえばそれまでですが、この点はAmbit3 Verticalを使っていた時と比べて使い勝手の悪さを感じています。

※2018/7/29追記:アップデートによって修正されたのか、現時点ではタイムラグはほぼなくなっています。

④ボタン配置が変わっている

これは単に慣れの問題なのですが、Ambitシリーズ比べて操作ボタンの配置が微妙に変わっています。初めてSUUNTOを使う人には影響ないと思いますが、乗り換えた人にとっては使い始めは操作にかなり苦労すると思います。

総評

Garmin等他の製品ではどうなのかは分かりませんが、そもそもの関心のポイントであった光学式心拍計の信頼性が高くないこと、光学式心拍計対応製品の価格感、Ambitシリーズの値落ち感を考慮するとまだAmbitシリーズでベルトを装着した方がコスパは良いかなと思います。